学会誌  

『日本医学看護学教育学会誌』 第26号No.1 (2017年4月 1日発行)

原著 ICU看護基礎知識評価試験の基準関連妥当性における外的基準の検討:筆記試験による知識の客観評価と自記式質問紙による技術・態度の自己評価との関連から 今井多樹子ほか
報告 "しゃべり場"で学生FDが考えた「看護学部にとってのよい大学・よい授業」 藤田小矢香ほか
報告 これから超音波検査を行う助産師へのシミュレーションプログラムの検討 -初年度研修受講者の実践演習後の気づきより- 井上千晶ほか
報告 男子学生の母性看護学実習開始時における心理状態に関する研究 纐纈祐子ほか
報告 講義とシャドウイングを併用したがん終末期看護学実習における学び ―急性期病院と在宅緩和ケア施設での実習を通して― 森京子ほか
報告 緩和ケア病棟における看護師の「回想」を促す質問に関する実態調査 木下みゆきほか
報告 大学病院の病棟看護師と診療連携室看護師が収集する退院支援・退院調整のための患者情報と連携の現状 齊田菜穂子ほか

ICU看護基礎知識評価試験の基準関連妥当性における外的基準の検討:筆記試験による知識の客観評価と自記式質問紙による技術・態度の自己評価との関連から
Investigation into the criterion-related validity of an evaluation test to assess the basic knowledge required of novice nurses in intensive care units: Relation objective evaluation of knowledge through written examination and self-evaluation of skill and attitude through self-administered questionnaire

今井多樹子,高瀬美由紀
Takiko Imai, Miyuki Takase

安田女子大学看護学部看護学科
Yasuda Women’s University, Faculty of Nursing, School of Nursing

概要(Abstract)

 本研究では,「初心者レベル」看護師用のICU看護基礎知識評価試験(以下,評価試験)の改良に資する示唆を得るために,評価試験の基準関連妥当性における外的基準を検討した。そのため,評価試験得点とその試験内容から理論的な関連が予測された情報活用能力と技術到達度,および看護実践能力の自己評価得点との関連を明らかにした。看護基礎教育機関(4施設)の最終学年生252 名を対象に無記名の評価試験と自記式質問紙による調査を実施した。調査内容は,評価試験得点,情報活用能力と技術到達度,および看護実践能力の自己評価得点,国試評点であり,評価試験得点と自己評価得点との相関(Spearmanの順位相関係数)などを分析した。結果,技術到達度と看護実践能力を自己評価得点で確認した場合,評価試験得点との関連が見出されないことが判明した。これは,評価試験得点を国試評点に置き換えてみても,同様の結果であった。つまり,今回の調査では,看護をめぐる知識と技術・態度の間には関連がないことが判明した。特に,技術到達度と看護実践能力の自己評価得点は,評価試験の基準関連妥当性を確立するための外的基準として適切ではないと考えられた。その一因として,技術到達度と看護実践能力は,学生が客観的に評価し難いという項目特性が浮き彫りとなった。現段階で評価試験の基準関連妥当性を確立できる外的基準としては,一連の先行研究から学内成績と国試評点が有力と考えられた。
 This study aimed to improve an evaluation test used to assess the basic knowledge required of novice nurses in intensive care units. Therefore, this study examined the criterion-related validity of the evaluation test. Hence, the study aimed to clarify the correlation between an evaluation test score and the self-evaluated scores on information processing, nursing skill, and nursing competence that have been predicted with theoretical relevance from the evaluation test. Data were collected through written examination and paper-based questionnaires for 252 thirdyear students at 4 nursing diploma schools. Survey contents were the evaluation test score, self-evaluated scores on information processing, nursing skill, and nursing competence, and score on the national examination for nurses.
 Collected data were analyzed using such tests as Spearman's rank correlation coefficient. Results indicated that the self-evaluated scores on nursing skill and nursing competence had no correlation with the evaluation test score.
 Similarly, score on the national examination for nurses also had no correlation with the self-evaluated scores on nursing skill and nursing competence. In other words, basic knowledge of nursing had no correlation with skill in and attitude toward nursing. Especially, the self-evaluated scores on nursing skill and nursing competence were found to be inappropriate as external criteria for establishing the criterion-related validity of the evaluation test.
 One of the possible reasons maybe that the nursing skill and nursing competence had the item characteristic that students could not be evaluated objectively. At this time, it was considered that academic achievement and score on the national examination for nurses wereappropriate as the external criteria for verifying the validity of the evaluation test, based on previous studies.

キーワード(Keywords)

筆記試験,基礎知識,自己評価,看護実践能力,ICU看護
written examination, basic knowledge, self-evaluation, nursing competence, intensive care unit nursing

"しゃべり場"で学生FDが考えた「看護学部にとってのよい大学・よい授業」
Student Faculty Development in School of Nursing think about “Good University, Good class”

藤田小矢香,長島玲子,吾郷美奈恵,伊藤奈美,岡安誠子
Sayaka Fujita, Reiko Nagashima, Minae Ago, Nami Ito, Seiko Okayasu

島根県立大学
The University of Shimane

概要(Abstract)

 本研究の目的は,しゃべり場で出された学生FDが考える「看護学部にとってのよい大学・よい授業」について明らかにし,今後の授業改善の方法を検討することである。研究対象者はA大学看護学部に在籍する学生FDメンバー11名全員(1年生4名,2年生4名,3年生3名),男性2名,女性9名であった。しゃべり場の内容はICレコーダーで録音し,逐語録にまとめ質的分析を行った。看護学部にとってのよい大学・よい授業のコードは137で,分析の結果,3コアカテゴリー,9カテゴリー,37サブカテゴリーが抽出された。コアカテゴリーは【教育を行うための人と組織のつながりがある】【学生自身の力量を発揮するための時間的余裕がある】【教育の質を高めるための戦略がある】であった。このことから教職員や学生同士のコミュニケーションの場を増やし,信頼関係を築いていくことを支援していくことや学生の学びの将来設計をイメージできるような支援が必要であると考えられた。また学生の学年進行に伴う学習内容の違いや,他領域との関連等のカリキュラム全体を教職員・学生が理解することは,「よい大学・よい授業」に向けた授業改善につながることが示唆された。

キーワード(Keywords)

学生FD,看護学部,よい大学,よい授業

これから超音波検査を行う助産師へのシミュレーションプログラムの検討 -初年度研修受講者の実践演習後の気づきより-
Simulation programs for the ultrasonic waves of a debutante midwife−realization in the first training−

井上千晶 1,藤田小矢香 1,濵村美和子 1,長島玲子 1,嘉藤恵 1,狩野鈴子 1,吉川憂子 2
Chiaki Inoue 1, Sayaka Fujita 1, Miwako Hamamura 1, Reiko Nagashima 1, Megumi Kato 1, Reiko Kano 1, Yuko Kikkawa 2

1 島根県立大学,2 島根大学
1 The University of Shimane, 2 Shimane University

概要(Abstract)

 私達は,助産実践力の向上を目指し島根県内初となる胎児超音波診断シミュレーターモデルを用いて全3回の講義・演習・実践演習の研修を開催した。今後よりよい研修プログラム構築に向けた検討資料とするため,本研究では受講者の実践演習後レポートの分析を行い,超音波検査を実施するにあたっての基本的な知識と操作技術の習得に関する学びや気づきを明らかにすることを目的とした。調査対象は2014年度超音波診断技術研修に参加した受講者5名である。方法は,受講生が妊婦に超音波検査を実施した後のレポート(以下,実践後レポート)の「超音波検査の操作及び所見についてわかったこと」に対する記述データを質的記述的に分析した。結果,66のコードから10サブカテゴリー,6カテゴリーが抽出された。【超音波診断装置の基礎知識】【プローブ操作のポイント】【画像描出の実際】【産科超音波を助産師が行う意味】【対象者への配慮】などから本研修プログラムは超音波検査の基本的な知識と操作技術の習得につながっていることが示された。一方で,課題として【画像描出の実際】に含まれる「描出の難しさ」や,【実践の場における指導の必要性】から,超音波検査を助産師が有効に活用していくためには,本研修後の支援体制や継続して修練できる環境の必要性が示された。

キーワード(Keywords)

助産師,妊婦健診,超音波研修,気づき
midwife, pregnant women medical checkup, training of ultrasonic waves, realization

男子学生の母性看護学実習開始時における心理状態に関する研究
Study on a male student's psychological condition at the start of maternal nursing practice.

纐纈祐子,中田久恵,大槻優子
Yuko Kouketsu, Hisae Nakada, Yuko Ootsuki

つくば国際大学医療保健学部看護学科
Tsukuba International University

概要(Abstract)

 本研究は,母性看護学実習開始時における男子学生の心理状態を明らかにし,具体的にどのような指導が必要であるか,その方法を検討するための基礎資料を得ることを目的とした。看護学科4年生男子13名を対象に,実習開始時に半構造的面接法によりデータを収集し,質的帰納的に分析した。
 その結果,【男性であることを意識した感情】【分娩に対する抵抗感】【母性看護学実習に抱く困難感】【母子の看護に対する不安】【母性看護学実習への期待感】【学生自身の経験からくる肯定的感情】の6つのカテゴリーが抽出された。男子学生は,母性看護学実習において,性差を意識し実習を困難なものにしていた。一方で,新生児のケアなどに対する期待感も抱いていた。今後は,学生の背景調査や母性看護学実習に対する学生自身の不安の把握が必要であり,そのためには不安の客観的指標の開発が求められる。また,実習以前の授業では,実践の場面に近づけた演習やロールプレイにより,母子の看護について具体的なイメージが持てるような指導方法が必要であることが示唆された。

キーワード(Keywords)

母性看護学実習 男子学生 心理状態
Maternal nursing practice, Male student, Psychological condition

講義とシャドウイングを併用したがん終末期看護学実習における学び ―急性期病院と在宅緩和ケア施設での実習を通して―
Learning in Cancer End-of-Life Nursing Practice with Combination of Lectures and Shadowing−Through the Training at an Acute Care Hospital and a Home Palliative Care Facility−

森京子,古川智恵
Kyoko Mori, Chie Furukawa

四日市看護医療大学
Yokkaichi Nursing and Medical Care University

概要(Abstract)

 本研究の目的は,A大学の成人看護学慢性領域におけるがん終末期看護学実習において学生が得た学びの内容を明らかにすることである。平成27年度統合実習成人看護学慢性領域の履修者10名のうち,同意が得られた学生の最終レポートをBerelson, B. の内容分析の手法を用いて分析した。履修者10名全員から同意を得て分析した結果,がん終末期看護学実習における学生の学びの内容として,121の記録単位から,【がんと共に生きる人と家族を支える看護師の役割】,【がん患者の思いに寄り添う関わり】,【信頼関係を基礎とした患者・看護師関係の重要性】,【垣根を越えたチームアプローチの重要性】,【在宅でその家族らしい最期を迎えるための支援】,【緩和ケアにおける医療者の姿勢】,【がん患者・家族の全人的苦痛・ニーズの捉え方】の7つのカテゴリーが得られた。学生は,講義とシャドウイングを通してがんと共に生きる人と家族に対する看護実践における基本的な姿勢を学んでいた。また,急性期病院と在宅緩和ケア施設の両施設において実習を行うことで,がんと共に生きる人が病期に応じてどのように療養していくのか連続して捉えることができたと考えられた。

キーワード(Keywords)

がん終末期,看護学実習,シャドウイング,看護大学生,学び
cancer end-of-life, nursing practice, shadowing, nursing college students, learning

緩和ケア病棟における看護師の「回想」を促す質問に関する実態調査
Nurses’ questioning to facilitate patients’ reflection in palliative care unit

木下みゆき 1,岡本彩奈 2,牟田真奈美 3,木部亜沙美 4,岡前紗希 5,竹元仁美 6
Miyuki Kinoshita 1, Ayana Okamoto 2, Manami Muta 3, Asami Kibe 4, Saki Okamae 5, Hitomi Takemoto 6

1 山口大学大学院,2 元山口大学医学部附属病院,3 国家公務員共済組合浜の町病院,4 社会保険小倉記念病院,5 財団法人倉敷中央病院,6 東京純心大学
1 Yamaguchi University School of Medicine, 2 Yamaguchi University Hospital, 3 Hamanomachi Hospital, 4 Kokura Kinen Hospital, 5 Kurashiki Central Hospital, 6 Tokyo Junshin University

概要(Abstract)

 回想は人生の意味付けや対話を促し,人生の受容を推し進めるという点において,グリーフケアの一つの方法として,患者や家族に有効であるとされている。しかし,終末期における回想の実態や有効性を明らかにした先行研究は少ない。本研究の目的は,グリーフケアが重要となる緩和ケア病棟において,どのように回想を促す質問を実施しているのかを明らかにすることである。森山の提示する「家族の回想を促すのに有効な質問項目」を基に,我々は新たに14項目の質問票を作成し,緩和ケア病棟に勤務する看護師に質問紙調査を実施した。調査対象はA県内すべての緩和ケア病棟(4施設)の看護師71名である。回収数は57名で有効回答数は55名(有効回答率77%)であった。結果は14の質問項目のうち,「どのようにしてお二人は出会われましたか?」の質問をしている看護師が71%,次いで「○○さん自身は今やっておきたいことはありませんか?」が66%,「人生の中で楽しかったことはどのようなことですか?」が64%であった。自由記述の質的分析から,看護師が「効果がある」と評価した回想を促す質問の効果として,①がんという病気と向き合って人生を統合していく,②患者・家族の絆が深まり,家族の健康的な悲嘆作業が促進する,③患者理解と人間関係の構築の3つが抽出された。

キーワード(Keywords)

回想法,回想,緩和ケア病棟,終末期看護,グリーフケア
Reminiscence Therapy , Reflection, Palliative Care Unit, Terminal Care, Grief Care

大学病院の病棟看護師と診療連携室看護師が収集する退院支援・退院調整のための患者情報と連携の現状
Improving nursing discharge planning: Coordination and collation of patient information collected by ward nurses and the medical liaison office for effective discharge planning

齊田菜穂子,渡邉則子
Nahoko Saita, Noriko Watanabe

山口大学大学院医学系研究科
Yamaguchi University Faculty of Medicine and Health Sciences

概要(Abstract)

 本研究は,大学病院の看護師における退院支援・退院調整の現状を明らかにすることを目的とした。A大学病院の病棟看護師,診療連携室看護師を対象に,退院支援・退院調整に関する情報収集の内容,開始時期,連携について自記式質問紙調査を行った。有効回答は429名(有効回答率95.5%)で,病棟看護師423名,診療連携室看護師6名であった。退院支援・退院調整を行うために看護師が患者情報を収集している項目のそれぞれの割合は6.1%~100%で,病棟看護師で最も高い割合だった項目は「患者の病状」414名(97.9%)であった。診療連携室看護師での情報収集率が100%の項目は63項目中44項目であった。病棟看護師より診療連携室看護師の方が高かった項目は患者のADLに関する項目であった。病棟看護師と診療連携室看護師との連携では,病棟看護師は約9割,診療連携室看護師は約3割が連携がとれていると回答した。このように病棟看護師は診療連携室看護師に比べて患者のセルフケア能力に関する情報が十分にとれていないこと,病棟看護師と診療連携室看護師の連携が不十分であることが明らかになった。病棟看護師は患者の自宅での生活を意識するとともに,診療連携室看護師との情報を共有して退院支援を行い,今後外来も退院支援・退院調整に参加できる体制を作っていくことが大切である。
 The study aim was to analyze current nursing discharge planning and coordination practices in order to improve discharge planning and the quality of life for patients following discharge.
 Participants were nurses working in inpatient units, outpatient clinics, and the medical liaison office at a university hospital. They completed a questionnaire containing items about information gathering for discharge; when nurses collected this information; and cooperation between the three departments.
 A total of 429 valid responses were collected (response rate: 95.5%) from 423 ward nurses (98.6%), six nurses at the medical liaison office (1.4%). The amount of information required for discharge planning successfully collected by the nurses ranged from 6.1% to 100% depending on the type of the information. Most often recorded was patients' medical condition (97.9%).
 While 100% of the liaison office nurses collected 44 out of 63 items of the information required for successful discharge, less than half the outpatient nurses did so. Liaison office nurses collected information on patients' Activities of Daily Living at a significantly higher rate than ward nurses. Ward nurses felt they had strong cooperative working relationship with the liaison office (87%) but only 33% of liaison office nurses felt the same.
 The study findings highlight two main areas of concern: that ward nurses did not adequately collect the required information about patients' ability to look after themselves; that cooperation between ward nurses and the liaison office was inadequate.
 Clinic nurses need to be aware of the necessity of gathering pertinent information for discharge planning and support, and ward nurses need to improve communication and information sharing with other departments.

キーワード(Keywords)

退院支援・退院調整,連携,患者情報,大学病院,診療連携室
discharge planning and coordination, cooperation, patient-information, University hospital, medical liaison office

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第28回日本医学看護学教育学会学術学会

平成30年3月3日(土)
サテライトキャンパスひろしま(広島市中区大手町1丁目5-3)

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第20回日本医学看護学教育学会学術セミナー

平成29年12月2日(土)
島根県立石見高等看護学院 大講義棟(島根県益田市昭和町20番15号)
テーマ:「施設から在宅へ―多職種協働による医療・介護の連携―」

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